直感!ばね設計マニュアル
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はじめに
このソフトは、圧縮ばねの設計を支援するプログラムです。
ばねの設計に必要な数値(線径・コイル径・巻数etc.)をスライダーの移動により決定し、その結果をリアルタイムに計算・図示します。
目標値を得るために再計算を繰り返すことなく「直感!」で設計できる…が、コンセプトです。
圧縮ばねを設計するうえで、皆さまのお役に立てれば幸いです。
画面説明
- 材質選択ボックス
- 数値入力スライダー
- 使用用途選択ボックス
- 略図(右巻き表示のみ)
- 計算結果
- マニュアル表示ボタン
操作方法
上記項目12をクリックまたはドラッグでパラメーター変化させるだけです。
~・~・~キーボードでの操作~・~・~
- コントロールの移動は、[TAB]で次へ、[SHIFT]+[TAB]で前項目へ移動
- [←][→]または[↑][↓]でスライダーの数値を変えることができます。
各数値は0.1単位など、細かな設定になるので、キーボードを使った入力を推奨します。 - 材質・用途ボックス内では、[SPACE]で、決定することができます。
入力時の制限について
スライダーコントロール内の数値は、一項目設定するごとにリミットが再設定されます。
線径………範囲[0.1~6.0]mm、変動単位[0.1]mm
総巻数……範囲[5.00~105.00]巻、変動単位[0.25]巻
コイル径…範囲[ばね指数4.0~22.0]mm、変動単位[0.1]mm
自由長……範囲[(密着長+0.2)~(ピッチ0.5Dx巻数)]mm、変動単位[0.1]mm
ばね定数…範囲[(コイル径及び巻数最大時)~(コイル径及び巻数最小時)]N/mm、変動単位[0.01]N/mm
取付長……範囲[(全たわみの20%+0.1)~(全たわみの80%)]mm、変動単位[0.1]mm
使用長……範囲[(全たわみの20%)~(全たわみの80%-0.1)]mm、変動単位[0.1]mm
(※)上図チェックをはずすと、「取付長」「使用長」のリミットが全たわみ分となります。
計算結果表について
設計内容によっては、[応力][縦横比][上限応力係数]が赤字になることがあります。
[応力]は、許容ねじり応力を超えた場合、赤色表示になります。
[縦横比]は、有効巻数確保・座屈を考慮し一般的に0.8~4までが良いとされているため、それを超える場合、赤色表示になります。
[上限応力係数]は、0.45を超えると「へたり」の可能性があるため赤色表示になります。
[推定寿命]は、疲れ限度線図、許容ねじり応力(JIS B 2704)を基に算出していますが、私の勉強不足もあり、納得のいく数値になっていません。この数値は、あくまで参考値として見てください。
(※)寿命に関しては、素材の引張り強さの規格の最小値で計算されているため、実際はもっと長持ちするのが常であると思われます。
また、成形後のショットピーニング・セッチングなどより、より長持ちする可能性があります。
詳細は、これら加工のノウハウのある会社などへ相談してみるとよいでしょう。
材料
ばね用として使用される材料(抜粋)
ピアノ線 | SWP-A | 主として動荷重を受けるばね用 |
SWP-B | ||
SWP-V | ||
硬鋼線 | SW-B | 主として静荷重を受けるばね用 |
SW-C | ||
オイルテンパー線 | SWOSC-B | 主として静荷重を受けるばね用 |
SWOSC-V | 弁ばね用 | |
ばね用ステンレス線 | SUS304-WPB | 汎用 |
SUS316-WPA | 耐食性・磁性の少なさ重視 | |
SUS631J1-WPC | 耐熱性重視 |
特に[-V]が付くものは、エンジンなどに使用される「弁ばね」用として、信頼性が高い
ピアノ線と硬鋼線の違い
- ピアノ線は、不純物の管理基準が厳しい。きず、脱炭層の深さの規定がある。
- 硬鋼線は、ピアノ線より基準が緩い分、コスト面でメリットがある。
オイルテンパー線とは
- 焼入焼戻し処理を施している材料
- 材料の弾性限が高く、耐熱性、耐へたり性に優れている
応力
応力とは、単位面積に受けている力の強さです。圧縮ばねの場合、材料は、ねじる方向に負荷がかかり、そのねじれを解消しようとする力が荷重となってあらわれます。
よって、応力が素材の持つ許容限(許容ねじり応力)を超えた場合、ねじれたまま永久変化し「へたり」を生じます。
静的荷重を受けるばねならば、多少のへたりは問題にならない場合もありますが、動的荷重を受けるばねの場合は、ばねの欠損に繋がるので注意しなければなりません。
本プログラムは、以下の式より応力を計算しております。
P:荷重
D:コイル中心径
d:線径
c:ばね指数
K(カッパ):ワール応力修正係数
(※)静荷重の場合、応力修正係数を考慮しないものとする。
ばね定数
ばねを設計するうえで、最も重要な項目の一つです。
本プログラムでは、以下の式より、ばね定数を算出しております。
d:線径
D:コイル中心径
n:有効巻数
G:横弾性係数
固有振動数
ばねが、サージングを起こすと、計算値よりも大きな応力が局部的に発生し、ばねの欠損に繋がります。
本プログラムでは、以下の式より1次固有振動数(両端自由または固定)を算出しております。
d:線径
D:コイル中心径
n:有効巻数
G:横弾性係数
γ(ガンマ):比重
ばね指数
ばね指数とは、D(コイル中心径)/d(線径)であらわされ、製造上の難易度の判定に使われます。
設計上4~22の範囲にするとよいとされていますが、製造上、6~15の範囲がバランスがよいと思われます。
縦横比
(全長)/(コイル中心径)であらわされる比です。
これが、4を超えると座屈が発生する可能性があり、何らかの対策が必要となる可能性があります。
素材張力
各素材には、線径ごとに引張り強さが規定されています。
SWP-Bの場合(抜粋)
線径(mm) | 引張り強さ(N/mm2) |
---|---|
1 | 2260~2450 |
1.2 | 2210~2400 |
1.4 | 2160~2350 |
1.6 | 2110~2300 |
1.8 | 2060~2260 |
2 | 2010~2210 |
2.3 | 1960~2160 |
2.6 | 1960~2160 |
2.9 | 1910~2110 |
本プログラムでは、これら数値の下限値で計算しております。
中間にある線径については、それより1段大きい線径の値を用いています。
許容ねじり応力
静荷重を受けるばねは、応力(最大応力)を上図にプロットして寿命を予測します。
上図より読み取れる応力の80%以下であれば、1000万回以上の寿命を期待できます。
JISによれば、ばねの密着時の応力が、これを超えないことが望ましいとしています。
静荷重・動荷重
静荷重(静的荷重)とは、ばねの使用状態で荷重変化がほとんどないもの、また繰り返しがあっても1000回以下のものをいいます。
これに対し動荷重(繰り返し荷重)は、読んで字の如く荷重変動を繰り返すものをいいます。